SS「嘘のつけない二人の世界」

えーっと、超今さらですが「エイプリルフール」の円風ＳＳになります。

付き合ってる円風です。とても短いです。

 

　＊　＊　＊　＊　＊

「風丸……オレ、もうサッカーはやらない」
　これ以上ないぐらい真剣な顔で言ったつもりだったのに、たっぷり10秒ほど沈黙した風丸は、特大のため息をついてからくすくすと笑い始めた。
「円堂、確かに今日は４月１日だけどな。せめてもう少し、ありそうな嘘は付けなかったのか？」
「えっ？」
「ありえなさすぎて、それじゃあ引っかかり様がないだろ。せめてそれは置いてこいよ」
「……あっ！」
　笑いながら指さされて、円堂は抱えたままだったサッカーボールを慌てて背中に隠す。
　嘘をつくことに一生懸命になりすぎて、そこまで考えが及ばなかった。
　失敗に気まずく後頭部を掻いた円堂だったが、笑い続ける風丸を見ているうちに、むうっと頬を膨らませてしまう。
「じゃあ、風丸だったらどんな嘘つくんだよ」
「えっ？　オレか？」
　予想外の切り替えしに、ようやく笑いを納めた風丸は、腕を組んで考え込む。
「う～ん……そうだな……じゃあ、オレ、今日限りで円堂とつき合うのは止めにする……って、なんだよその嬉しそうな顔は！」
「だって、それって『嘘』なんだろ？」
　にこにこと上機嫌の円堂に指摘され、そういえばそうだった、と気がついた風丸の頬が、かあっと照れの色に染まる。
「なんだよ！　わかってたって、もうちょっと残念そうな顔とかしてみせろよな！　だいたい嘘なんて、つけって言われてつくものじゃないし！」
「いやー、うん、そうなんだけどさ」
　照れ隠しも含めてなにやら盛大に憤っている風丸をなだめながら、円堂は抱えたままだったボールを足下に落として、空いた両手を風丸に差し出した。
「でも、風丸が一番に思いついた嘘がオレとのことだったっていうのが、なんか嬉しい」
「……仕方ないだろ。いつでもお前のことばっかり考えてるんだから。……サッカーのことばっかり考えてるお前と違ってさ」
　ため息混じりに文句を言いながら、風丸は差し出された腕の間に当たり前のように踏み込んでくる。
「オレだって風丸のこと、ちゃんと考えてるってば。　あっ、ほら、風丸、今……キスして欲しいって顔した！」
「なっ！？　そんなの嘘だ……っ」
　慌てた風丸をそのままぎゅっと抱き締め、円堂は今ついた小さな嘘を真実にするために、その唇を塞いでしまった。

　＊　＊　＊　＊　＊


大切すぎて嘘にできない、とかではなくて、大切だからこそ
一番に思いついて嘘にしちゃうぐらい単純明快な幼なじみカップルが好きです。

ところでエイプリルフールって嘘ついてなにする日でしたっけ？
ああ、恋人がいちゃいちゃする日でしたね！　そいつはよかった！