SS「おくりもの」

お友達のきりんちゃんの誕生日に送りつけたSS。
初のバーン×ガゼルに挑戦してみました！
お誕生日ネタでほのぼのしてます。




 

　＊　＊　＊　＊　＊


　1ヶ月ぶりに貰った小遣いで、懐は珍しく暖かい。さあ今日は何をしようか。考えを巡らせながら町を歩いていた南雲の隣で、涼野がぴたりと足を止めた。
「あ？　どした？」
「バーン……お前は自分の誕生日を覚えているか？」
「はあっ？　誕生日？」
　いつもの南雲ならば、嫌がらせのように今でもまだその名前で呼んでくる涼野に文句の一つも言うところなのだが。
　文句の替わりに、南雲はお日さま園に来る前の遠い記憶を辿ってみる。
「……あんまはっきりは覚えてねぇな。ああ、でもたしか、ちょうど今ぐらいだったはずだけど」
「そうか。では行くぞ」
　頷いた涼野が、唐突に南雲の腕を掴んだ。そのままぐいぐと引いて、問答無用で傍らの店に南雲を連れ込もうとする。
「おい、なんだよ風介！」
　慌ててしまい、反射的に腕を振りほどこうとした南雲に、涼野はむっと眉を寄せた。
「なんだはこっちの台詞だ。せっかく私が祝ってやろうというのに、お前は気に入らないと言うのか ？」
「祝うって……あっ……！」
　涼野が向かおうとしていた先は、小さな洋菓子屋だった。ショーウィンドウには大きなホールケーキが飾られ、楽しそうなデコレーションと『たんじょうび　おめでとう』と書かれたプレートが乗っている。
「誕生日なのだろう？　まさか今日とは思わなかったが、誕生日とはケーキがなければ迎えられないものだからな」
「風介、お前……」
　真面目な顔でそう言った涼野に、南雲は目を見張る。……今ぐらいとは言ったけれど、別に今日が誕生日なわけじゃあないとか、ケーキがなくても誕生日は迎えられるとか、いったいどんなケーキを買うつもりでいるんだとか、言いたい事はいくつかあったが、南雲の口から出たのはまったく別の言葉だった。
「……なあ、風介は？　お前の誕生日はいつなんだよ」
「私は……わからない。祝ってもらったことがあるのかどうかも覚えていなくてな」
　一瞬、涼野は目を伏せる。
「だが！　それとお前の誕生日を祝うことには何の関係も……」
「いーや。だったら一緒に祝っちまおうぜ」
　言いかけた言葉を遮って、南雲は逆に涼野の手を取り、洋菓子屋の店内に入った。…大丈夫、今日の南雲の懐は暖かい。ショーウィンドウにあるようなホールケーキは無理でも、小さなケーキを涼野に送る余裕ぐらいなら十分にある。
「何のつもりだバーン！　私の誕生日は……」
「いつだかわかんねぇなら、いつ祝ったって構わねぇってことだろ。……なあ、どれ食う？　このへんのやつが誕生日っぽいか？」
　イチゴの乗ったショートケーキを指差すと、呆然とした顔で南雲を見つめていた涼野がはっと我に返った。
「っ！　お、お前の分は私が買うと言っているだろう！」
「んじゃ、ワリカンな。半分して食おうぜ。あ、あれも美味そうだな」
「おい！　勝手に決めるな！　…晴矢っ！」
「……へへっ！」
　いつもどおりの文句は聞き流し、けれど南雲は、呼ばれた名前にひっそりと喜びをかみ締めていた。


　＊　＊　＊　＊　＊


ガゼルはクール天然、バーンは直情型常識人のイメージがあるので
バンガゼはこんな感じで仲良くしてるといいと思います。

そしてきりんちゃーん、いつも売り子やらなんやらありがとね…ｖ
エイリアメインの人なのに、円風のことを
いつのまにか「夫婦」って呼ぶようになってくれてありがとね…！
（人はそれを洗脳と呼ぶ・笑）