SS「となりで（立綱）」

アニメ85話より。イナズマジェット的な立綱。
あの二人が好きならあのネタは外しちゃいけないよね、的な。

円風版の「となりで」と内容が一部繋がってます。
やっぱり短いです。

　＊　＊　＊　＊　＊


「海に帰してくれ～～っ！」
　響き渡った絶叫に苦笑しながら、立向居は震えながら天を仰ぐ綱海を見つめた。
　イナズマジェットに乗る前……いや、世界大会に向かうためには飛行機に乗らなければならないと知った時から、綱海はずっと様子がおかしかったけれど、まさか飛行機が苦手だったなんて。
　ノリと勢いで突き進み、怖いものなど何もないように見える綱海にも苦手なものがあったことが意外でしかたがない。けれど綱海の意外な弱みは、立向居にはとても新鮮で、可愛らしく感じられた。
　……本気で怖がっている綱海を見て可愛いと思ってしまうなんて不謹慎だし、なんとかしてあげたいとも思うのだけれど。
「ああ、そうだ……！」
　ぽん、と手を打った立向居は、離陸の直前にちらりと目にした光景を思い出していた。
　通路を挟んだ向こう側で、いつもと少し違う顔をした円堂が隣の風丸の手に触れて何事か囁き、すぐにいつもの顔に戻って笑い合っていた。
　円堂たちが何を話していたのかは聞こえなかったけれど、あんな風に手を触れあえば、綱海の不安も少しは解消されるかもしれない。
「……綱海さん」
　呼びかけながら、立向居はそっと右手を伸ばし、震える綱海の手に触れた。途端、息を飲んだ綱海が縋るように立向居の手を握ってきた。
「っ！」　
　痛いほどのその強さに、立向居の眉が寄る。いつもの綱海ならば、キーパーの立向居の手をこんな風に握ったりはしない。その余裕のなさと込められた力が、綱海の不安と恐怖を立向居に伝えてくる。
「つ、綱海さん……すみません、ちょっと痛いです……」
　途端、ぱっ、と綱海の手が離れた。立向居の手の代わりにまた自分の両膝をきつく握った綱海が、聞こえるか聞こえないかの小さな声で「悪ぃ、大丈夫か……？」と呟く。
　大丈夫じゃないのは綱海の方なのに、それでも立向居を気遣う綱海にぎゅっと胸をつかまれるような気持ちになって、立向居は思わず綱海に腕を回し、震えるその身体を抱きしめてしまっていた。
「たっ、ちむかい…っ？」
「大丈夫です、綱海さん。飛行機の座席は背もたれが高いから、誰も見てないと思います。土方さんもさっきからずっと寝てますし」
　大丈夫の意味が少し違ってしまったけれど、立向居は気にせず綱海に囁く。
「あの、オレ……何もできないけど、こうやってここにいますから。……綱海さんの隣に」
　回した腕にぎゅっと力を込めると、目をつぶった綱海が細く息を吐いた。
「向こうは南の島ですし、着いたら最初の自由時間に海に行きましょうね」
　重ねてそう言うと、綱海は微かに頷いて、胸の前に回されていた立向居の腕に、今度はそっと掴まった。
 

　＊　＊　＊　＊　＊

にーに弱い！たちむーはギャップに萌えた模様です。（私もそこに萌えました！）

円風もばっちり見られてるし…（笑）
当然円風からも立綱は見えてますが、「あー、綱海怖がってたもんなー」ぐらいでスルーです。
気付いちゃって目のやり場に困るのは、位置的に鬼道さんでしょうね……。
佐久間はきっと気付かない（笑）

ジェットから下りた綱海は情けない自分への自己嫌悪と照れで
立向居と隣になるのを嫌がって後ろの方行っちゃって、
取り残されてしょんぼり寂しそうにしていた立向居を、
円風夫婦がばちっとアイコンタクトしてから拾って挟んだ、
……というライオコットキャラバン座席事情まできっちり妄想済です（笑）