SS「Trick or Treat?」

超久しぶりの更新＼(*＾▽＾*)／

ハロウイン円風が降りてきたので上げます！

1期ぐらいかな？
付き合ってるけど友情系な円風カップルの
イチャイチャ（？）ハロウィンになります。

　＊　＊　＊　＊　＊


「で？　なんなんだ、いきなり。貴重な15分休みだっていうのに…」
　授業の合間、廊下の途中で行き会った円堂に、階段上の、屋上手前の踊場までひっぱってこられた風丸は、一番上の段に腰掛けて、数段下に立っている円堂を睨んでみせた。
  もちろん、こうして休み時間に円堂と二人で話していることが、不満なはずなどないのだけれど。
「なあ風丸、『トリック　オア　トリート』って知ってる？」
「トリック……？　ああ、あれだろ。お菓子くれなきゃいたずらするぞって、ハロウィンのやつ」
　いささか予想外の問いかけだったが、真面目に答えた風丸に、円堂は嬉しそうな顔で大きく頷いた。
「そうそう！　それ！」
「……なんだよ円堂、この手は」
　頷きながら差し出された掌をぺしりと叩いて追いやるが、円堂は懲りずにもう一度両手を差し出してきた。
「風丸っ、トリック　オア　トリート！　……お菓子ちょうだい」
「あるわけないだろ。休み時間まで菓子を持ち歩くとか、壁山でもあるまいし」
　苦笑しながら即答した風丸だったが。
「ああ、でも……たしか鞄にカロリーメイトがあるぜ？　取ってくるか？」
「えっ……カロリーメイトはお菓子じゃないよな？」
「菓子みたいなもんだろ。なんだよ、腹減ってるからなんか食いたかったんじゃないのか？」
　問い返せば、逸れかけた話題に気づいた円堂が、ぶるぶると大げさに首を振った。
「違ーうっ！　腹はまあ空いてるけど、そうじゃなくて！」
「じゃあ、なんだよ？」
「だからっ、トリック　オア　トリートだってば！」
「菓子がいらないなら悪戯がしたいのか？　悪いが、お前の悪戯に引っかかるようなオレじゃないぜ？」
　円堂の求めるものが判らず、首を傾げながらも正論を重ねる風丸に、円堂がぐっと言葉に詰まった。
「たからさぁ……っ、ああ！　もうっ！」
　上手く出てこない言葉の代わりに、伸びた両手が風丸の両肩に重みをかける。
「あっ、こらっ、なにして……っ！」
　座った状態で肩を押さえられ、身動きできなくなってしまった風丸に、円堂は身体を折り曲げるように身を寄せ、文句を言いかけた唇をちゅっと啄んだ。
「へへっ。トリート、いただきっ！」
　満足そうに笑った円堂が、次の瞬間ぱっと身を翻す。
「……えっ…円堂ーっ！　お前っ、学校で何やってんだっ！」
　呆然としていた風丸が、なんとか立ち上がってそう叫んだ時には、逃げ出した円堂の背中はとっくに階下へと消えてしまっていた。
　そんな円堂を追いかけることはせずに、風丸はもう一度階段に座り込む。
「あいつ…！　トリック　オア　トリートって……これ、トリートじゃなくてトリックの方だろ！」
　引っかからないと言ったのに不覚を取っただなんて悔しすぎる。さて、放課後に会った時、円堂をどうしてやろうか。
　そんなことを努めて考えながら、風丸は不意打ちのキスに赤くなってしまった頬を落ち着かせようと、両手で顔を覆った。