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先日UPした33話円風の、円堂サイドからの裏話を書きました。
(でもやりすぎました。キャプテンちょっと揺らぎすぎです…。)
すごく風円っぽくなった…かも。
でも円風です! 円風なんです…!
* * * * *
本当はオレだって、それを考えなかったわけじゃない。
「なに言ってるんだ! 神のアクアになんか、頼っちゃ駄目だ!」
だから風丸を諫める口調は必要以上にキツくなってた。
神のアクアを飲んで、手に入れて、エイリア学園を倒す……それが努力も正しさも、全部投げ出した方法だってことは分かってる。
でも、豪炎寺のこととか、いまごろ病院にいるみんなのこととか考えたら、そんな間違った考えが浮かんでくるのを止めることができなかった。
でも、やっぱりそれじゃ駄目なんだ!
「俺たちは正々堂々と戦って、絶対に勝たなきゃいけないんだ!」
半分くらいは自分に言い聞かせるみたいだったオレの言葉。
「……悪かった」
すぐに謝って、少しだけ笑ってくれた風丸に安心する。たぶん、風丸だってちゃんとわかってるんだと思う。その考えが間違っているんだってことを。
「なに焦ってるのかなぁ、俺。……忘れてくれ」
返事の代わりに、オレは風丸の背中を手のひらで叩いた。
「特訓、特訓! なろうぜ、風に!」
「ああ」
肯いた風丸が、今度はちゃんと笑う。
二人で話したいって急に言われてちょっとびっくりしたけど、風丸がこんな風に悩んでるなんて全然思わなかった。 ちゃんと話せてよかった……なんて思ってるうちに、話してる時には忘れてた眠気がオレの所に戻ってきた。
「ふあ……」
「そろそろ戻るか?」
欠伸したオレに、すっかりいつも通りの口調に戻った風丸が言う。
「そうだよな、もう戻らなきゃだよなぁ……」
とりあえずイナズマキャラバンのデッキから降りるけど、オレの足取りはちょっとだけ重い。
風丸は、すぐにそんなオレに気がついたみたいだった。
「何かあるのか?」
ある、といえばあるんだよな。
泊めてもらってる教室を出てくる時、オレたちが帰るのが遅かったら先に寝ててくれって言ってきた。
みんな疲れてるだろうし、今頃はもうぐっすり眠ってるんじゃないかと思う。だけどオレは今から戻ってもきっと眠れない。……アレのせいで……。
なんて思ってたら、うっかり原因の壁山の名前が口から飛び出してた。
「ああ、なるほど」
風丸が苦笑しながら、オレの意見に賛成してくれた。
「たしかに、あのイビキは破壊的だよな」
別に壁山が悪いわけじゃないからどうにもできないけれど、眠れないってわかってるのに、このまま戻るのはちょっとつらいよな……あっ、そうだ!
「このままイナズマキャラバンで寝るってのは?」
今降りてきたイナズマキャラバンを指さして言ったら、風丸は「ここで?」と首を傾げた。
「でも、鍵が閉まってるから中には入れないだろ?」
「ああ! そっか!」
じゃあやっぱり戻って、壁山のイビキを子守歌にして寝るしかないのか……。
一瞬くじけそうになったオレだったけど、校務員室に毛布があるって吹雪が言ってたことを、風丸が思い出してくれた。
さすが風丸! 一緒に聞いてたはずなのに、オレそんなことすっかり忘れてたぜ。
忘れてたついでに、うっかりいつものジャージのままイナズマキャラバンまで出てきてしまっていたオレたちは、寒さに追いかけられるみたいに白恋中の校舎に走り込んだ。
吹雪の言っていた通り、校務員室には毛布が何枚も積み上げられていた。よかった、これならここで眠れそうだ。
同じようなことを言いながら風丸が毛布を1枚取って渡してくれた。
「ほら円堂、毛布」
「ありがとう風丸」
校務員室の畳になってるとこに上がって、風丸と並んで毛布に包まると、冷たかった体がだんだん温まってきた。
辺りはすごく静かで、遠くの方からかすかに壁山のイビキが聞こえてる。
昼間の特訓……っていうか、初めてのスノーボードでたくさん転んだせいで、体のあちこちが痛い。あんまり自覚はないけど、疲れてもいるんだと思う。
だから早く眠って、明日の特訓に備えないと……そう思ってるのに、目を閉じたオレはちっとも眠れる気がしなかった。さっきまで眠かったはずなのに……って、原因はちゃんとわかってる。キャラバンのデッキでした風丸との話だ。
……もしもあそこで風丸が弱音を吐かなかったら、神のアクアの話を持ち出してたのはオレの方だったかもしれない。だけど、そしたら本気でオレを怒ってくれたのが風丸になったんだろうって思う。
オレと風丸はぜんぜん違うのに、時々そうやって似てるとこがあるんだ。いいとこも、悪いとこも。……だからオレにはわかった。毛布越しに感じる風丸の気配が、いやな感じにピリピリしてるってことが。
きっとまだ風丸も起きてる。起きてて、何かぐるぐる考え込んでるような気がする。
声をかけた方がいいかもしれない、と思った時、風丸が小さな声でつぶやいたのが聞こえてきた。
「神のアクア……」
びく、とオレの背中がこわばる。わかったって言ってくれたのに、やっぱり駄目なのか風丸……? でも、オレの心配はそのすぐ後に打ち消された。
「いや……俺はもう焦らないって決めたんだ……」
悩みはまだ消えてない。消えたはずない。でも、風丸はちゃんと前を見てる。オレは思わず風丸の名前を呼んで身体を起こしていた。
「風丸」
「円堂!? ……まだ起きてたのか」
少し慌てた感じで一緒に起きあがった風丸に、オレは思いついたことを伝える。
「なあ、明日の朝、早起きして特訓しに行こうぜ」
悩む時、迷う時……そんな時はとにかく特訓だ! そうだよ、それが一番の解決方法だって!
「早起きって朝メシの前にか? 円堂も?」
驚いてる風丸に頷いて、オレはさっきイナズマキャラバンの上でしたみたいに風丸の背中を叩いた。
「そうそう。オレもつきあうからさ……一緒に風になろうぜ、風丸!」
でもって、みんなで強くなろう。そう言ったら、風丸はぐっ、と拳を握りしめた。
「ああ、そうだな。頑張ろう、円堂!」
それはいつもフィールドでオレのすぐ前を守っている風丸らしい力強い言葉で、オレはまた少し安心する。だけど……。
「じゃあもう寝ようぜ」
言いながら、オレはそっと風丸の真剣な顔を見た。
風丸はいろんなことをいっぱい考えてる奴だから、オレたちがエイリア学園より強くなるその時までは、きっとまだまだ悩むんだと思う。オレがぐるぐる悩むのなんかより、もっと、ずっといっぱい。
「風丸、寝るならもうちょっとくっついてもいい?」
「は? ……いいけど。寒いのか?」
適当な返事をしながら、オレはごろんと寝返りを打って、風丸が持ち上げてくれた毛布に潜り込んだ。二人でぴったりくっつけば、あったかくなるし安心する。すぐに風丸の寝息が聞こえてきた。
寝顔を見ながら、小さな声で話しかける。
「なあ風丸、お前もオレも、同じゴールを守ってるんだからな。一人で考え込んだり、悩んだりしないで、一緒にエイリア学園に立ち向かおうぜ?」
声に出して最後まで言えたかどうかわからない。
風丸のあったかさをすぐ側に感じながら、オレもいつの間にか……眠って……。
* * * * *
無謀にも、円堂一人称に挑戦でした。
む、難しかっ……後でこっそろいろいろ修正されるかもしれません。
お気楽極楽ノー天気…ってわけじゃないのにやっぱりまっすぐでどっしりって、
キャプテンはどんだけおっとこ前なんでしょうね。さすがキーパー。
惚れてまうやろーー!
(お礼SS・円風2種+α)
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イナズマサ一チ
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