ＳＳ「君が側にいるから」

円堂＆風丸小説。円風だと言い張る方向。
33話の、あの二人っきりのシーンから繋がってます。

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「特訓、特訓！　なろうぜ、風に！」
　肩に回った円堂の手が、暖かい眼差しが、風丸の焦りを心の奥底へと押し込んでゆく。
「ああ」
　肯いて、風丸は笑顔を浮かべた。
　こんな風にいつでも明るく照らしてくれるから、思い悩んでいる時はつい円堂と話したくなる。
　二人でちょっと話さないか、なんて唐突に言いだすのはどうかと思いはしたが、やっぱりこうして誘ってみてよかった。
　そんなことを考えていると、気合いいっぱいだったはずの傍らの円堂がちいさな欠伸をこぼした。
「ふあ……」
　話し込んでしまったおかげで、時刻はすでに就寝時間を回ってしまっている。
「そろそろ戻るか？」
　移動中はイナズマキャラバンの中で眠っているメンバーたちだが、今は白恋中の教室を借りて泊まっていた。
「そうだよな、もう戻らなきゃだよなぁ……」
　デッキから降りる梯子へと向かいながら、円堂がわずかに口ごもる。
「何かあるのか？」
「いやぁ、ほら……この時間じゃ、みんなもう寝てるだろうからさ。……壁山とか……」
「ああ、なるほど」
　円堂の言わんとすることを察して風丸は苦笑する。
「たしかに、あのイビキは破壊的だよな」
　同じタイミングで寝てしまえばあまり気にならない風丸にしても、あの破壊的なイビキを子守歌にしながら眠るのはすがに厳しいかもしれない。
「そうだ！　このままイナズマキャラバンで寝るってのは？」
　梯子を降り、雪の積もった地面へと降り立ったところで、円堂がぽんと手を叩き、今まで上っていたイナズマキャラバンを示した。
「ここで？　でも鍵が閉まってるから中には入れないだろ？」
「ああ！　そっか！」
　風丸の突っ込みに、円堂が絶望的な声を上げる。
「じゃあ戻るしかないかぁ……」
「あ、そういえば円堂、吹雪がさ…」
　白恋中の校舎を借りて泊まることになったとき、もし夜になって寒かったら、校務員室に毛布があるから自由に使っていいと言ってくれていたはずだ。
「校務員室でなら眠れるかもしれないぜ。行ってみるか？」
「うん！　行こう風丸！　……っていうか、さすがにオレ、そろそろ寒いかも……」
　しんしんと冷え込む空気の中、いつものジャージだけで話し込んでいた二人は慌てて白恋中の校舎へと駆け込んだ。

　吹雪の言っていた通り、校務員室には毛布が何枚も積み上げられていた。
「よかった、これなら眠れそうだな。ほら円堂、毛布」
「ありがとう風丸」
　畳敷きになっていた部屋の一角に上がって毛布に包まると、冷えていた身体が少しずつ暖まってくる。
　……しんと静かな空気の中、遠くからかすかに壁山のイビキが聞こえていた。
　横になった風丸だったが、疲れているはずなのに目をつぶっても眠気はちっとも襲ってこない。
　それでも眠ろうと閉じていた瞼の裏に、押しやったはずの速さへの焦りが再び浮かんでしまい、風丸ははっと瞳を開いた。
「神のアクア……いや……俺はもう焦らないって決めたんだ……」
　小さな呟きに、風丸の隣で横になっていた円堂がぴくりと身じろいだ。
「……風丸」
「円堂!?　……まだ起きてたのか」
　呟きを聞き咎められたのかと焦った風丸だったが、円堂はその事には触れずに半分だけ身体を起こした。
「なあ、明日の朝、早起きして特訓しに行こうぜ」
「早起きって朝メシの前にか？　円堂も？」
「そうそう。オレもつきあうからさ」
　円堂の力強い手が、風丸の肩をもう一度叩く。
「一緒に風になろうぜ、風丸！　でもって、みんなで強くなろう」
　その言葉に、風丸はぐっ、と拳を握りしめた。
「ああ、そうだな。頑張ろう、円堂！」
「へへっ、じゃあもう寝ようぜ。……ところで風丸、寝るならもうちょっとくっついてもいい？」
「は？　……いいけど。寒いのか？」
　うん、そうそう……などと肯きながら、円堂はごろりと寝返りを打って風丸に身を寄せてきた。　風丸も、毛布を上げて円堂を迎えてやる。
　ぴたりとくっついて二人分の毛布に包まれば、窓の外が銀世界だということを忘れてしまうくらい暖さが増した。
　その暖かさと、一緒にいるだけで安心感が沸き上がってくる円堂の気配との相乗効果で、風丸は少しずつ眠気に包まれていった。

　目を閉じた風丸は、ぴたりと側に寄っている円堂が珍しく心配そうな表情で自分を見つめていたことには、もちろん気が付きはしなかった……。

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同衾ネタ（？）のくせに、どこまでも健全に。
キャプテンは太陽なので、彼がいてくれれば風丸さんは大丈夫だって信じてます！
おバカで能天気だけどしっかり皆を（そして風丸を）見てる、それが円堂守だー！

33話の感想書いてからいろいろ考えてみたんですが、
あの後二人がみんなのとこに戻ったんだったら、
朝練に出てくる時に染ちゃんがいないことくらい気がつくよねー？

 そして風丸さんのあの寝不足顔がどうしても気になる。気になるっ…！！