５ 逃げないで／10の優しい恋

円風でお題　「10の優しい恋」　（モモジルシ様からお借りしました。）
順不同、スローペースで展開予定。どれも多分短いです。

１　遠くにいても　（済）
２　君の歌　（済）
３　おでこにキス （済）
４　永遠を教えてあげる（済）
≫５　逃げないで　（付き合ってる円風）
６　大丈夫（済）
７　幸せ
８　愛してる　（済）
９　包んだ手　（済）
10　ずっと一緒　（済）

　＊　＊　＊　＊　＊


「それで、みんなが大騒ぎになったんだけど、うちの担任がさ……」
　円堂の少し前を歩く風丸は、さっきから熱心に、クラスで起こったちょっとした事件についてを話している。
　けれど、そんな風丸の話は、円堂の頭の中を右から左へと通り過ぎてしまっていた。
　円堂の意識を占領しているのは、風丸が話す度に左右へと揺れる、結い上げたその長い髪。
　ふわり、ふわりと動く青い尻尾に合わせて、円堂の視線もゆらゆらと左右に振れる。
　見つめているうちに毛先を捕まえてしまいたくなって、円堂ははっと我に返った。
　いくら相手が恋人だからといって、いきなり髪を掴むなんて失礼にもほどがある。
　……そう思い留まったはずだったのに。
「円堂？　聞いてるのか？」
　すでに生返事すら忘れている円堂に気づいた風丸が、話を止めてくるりと円堂を振り向いた。
　いや、振り向こうとしたから。
「あっ！」
「っ、痛っ！　なにすんだ、お前！」
「ごっ、ごめん、風丸！」
　反射的に手が出てしまった円堂が、強く引いてしまった髪の先を慌てて離しながら謝る。
「なんか、逃げそうって思ったら、つい……」
「逃げる？　オレの髪が、か？」
　円堂から取り戻した後ろ髪を肩の前に回し、手櫛で大ざっぱに梳きながら、風丸はつり上げていた目元を少しだけ緩めた。
「そんなわけあるかって。まったく、円堂は……」
　仕方がないな、と言いながら、風丸は髪の先を背中に払うと、その手を円堂へと差し出した。
「ほら。……掴むなら、髪じゃなくてこっちにしろよな」
「風丸…！」
　照れたのか、手を差し出したままふいと前を向いてしまった風丸に、円堂は慌てて駆け寄る。
　そして、もう風丸の髪を捕まえたりしなくても大丈夫なように、しっかりとその手を握りしめた。


　＊　＊　＊　＊　＊


普通にらぶらぶ円風。怒るけど、怒んない。そんな風丸さんはかわいい。

お題　９／１０　クリア。　あと一つ。