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 風丸さんを愛する稲妻11ブログ。現在、凪いでいます。
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雷門Fフロンティアメンバーが、夏の海辺で合宿をしてる話。
某夏合宿企画さまに送ろうと思って書き始めたのに、
秋分を過ぎても終わらなくて青くなってましたが、なんとか終わりました…。

カプなしのオールキャラです。
海ネタなのに水着要素すらありません(笑)

季節はずれですが、まあ、広い心で、ひとつ。
あ、当社比ですがけっこう長くなってます。



 * * * * *



 夏の日は長い。
 マネージャーたちの心づくしの夕食を食べ終わっても、海の上に浮かんだ太陽は、まだまだ沈む気配を見せなかった。
「沈まないっスねぇ…」
「そうでやんスねぇ」
「まだ明るいっスねぇ…」
「そうでやんスねぇ」
「早く、暗くならないっスかねぇ…」
 窓に張り付いた壁山と栗松が、じりじりとしか下がらない太陽を睨みながら繰り返している。
 その背後では、一之瀬、松野、土門、半田、少林寺の5人が、大きな袋を取り囲んで目を輝かせていた。
「えっと、特大ファミリーセットが4つだろ、打ち上げ花火セットが2つに……」
「へえ、こっちのは仕掛け花火セットだって。面白そう」
 あまり聞いたことのない店名の書かれたコンビニの袋には、大量の花火が詰め込まれていた。半田と松野ががさがさとその袋をひっかきまわしている。
「それにしてもすごい量ですねー」
「ホント、どんだけ買ったんだよ、これ」
 目を丸くする少林寺と呆れ顔の土門に、買出しについて行っていた一之瀬が笑う。
「うん、店にあっただけ、全部買い占めてたよ」
「マジでか? さすがお嬢さまはやることが違うな」
 土門の言い様に、でも! と少林寺が言葉を返す。
「おかげで花火、全員で楽しめそうですよ?」
「うん、そうだね」
 頷いた一之瀬に、土門も「まあ、そうだな」と笑う。
「そうそう! 合宿には花火がつきものだもんな! なあ、マックス!」
「合宿は関係ないと思うけど、たしかに夏は花火かな」
 クールに流した松野に、盛り上がっていた半田ががくりと肩を落とし、囲んでいたみんなが一斉に笑う。

『円堂、合宿だ。今度は海に行くぞ。修練場の特訓だけじゃ、身に付く能力が偏るからな』

 そんな監督の一声で、フットボールフロンティアで連勝中の雷門イレブンは、現在2泊3日の臨海合宿の初日を迎えていた。
 稲妻町からそう遠くない所にも海があり、鉄塔の上から遠く眺めることもできる。しかし今回の合宿で訪れたのはそんなコンクリートの岸壁に囲まれた都会の海ではない。
 電車とバスを延々と乗り継いでたどり着いたのは、寂れて人の気配がない田舎の海辺……良い見方をすれば、海の青、砂浜の白と木々の緑以外はほとんど見あたらない天然の訓練場だった。
 まるでリゾート地のような美しい海に最初ははしゃいでいた部員たちだったが、そこで待ち受けていたのは、イナビカリ修練場のメニューに負けず劣らずハードな猛特訓で。
 ……たとえば、フォワードの染岡や豪炎寺には、水中からの必殺シュートで大波を貫く特訓。
 キーパーの円堂やディフェンダーの風丸たちには、どんな波がぶつかっても姿勢を崩さずボールをキープし続ける特訓。
 ミッドフィルダーの鬼道や一之瀬たちには、水の抵抗や足元の砂に負けないよう素早く動きながらパスを回す特訓。
 そのほか、いろいろ。
 どれもむちゃくちゃで、あちこちから何度も「無理!」という悲鳴が聞こえてきたが、無茶を乗り越えることが信条の円堂の励ましに背中を押され、部員たちは過酷な特訓をなんとかクリアしていった。
 特訓が終わる頃にはボロボロのくたくたに疲れきっていても、そこは元気が有り余っている年頃の少年たちだ。
 薪で沸かしたという古めかしい風呂に浸かり、夕飯を食べ終わる頃には、各自、それなりにいつも通りの元気を取り戻していた。


 それを見つけたのは、特訓の合間にちゃっかり秋たちマネージャー3人娘の買い出しについて行っていた一之瀬だった。
「あっ、花火があるよ。買っていって、暗くなってからみんなでやらない?」
 ほとんど雑貨屋といった風情のコンビニで、そこだけ充実している花火の棚を指差した一之瀬に、秋と春奈が歓声を上げる。
「いいんじゃないかな。楽しそうだし、みんなも喜ぶと思うわ」
「私、やりたいです、花火!」
「そうだな。……どうする?」
 一之瀬と同じく買い出しにつき合っていた鬼道が、妹の言葉に頷いてから、背後で腕組みをしている夏未へと問いかける。
「そうね……みんな特訓を頑張っていたみたいだし、少しは楽しみがあったほうがいいかもしれないわね。買っていきましょう」
「やったぁ! ありがとうございます、夏未さん!」
「別にあなたからお礼を言われるようなことではないわ。……ああ、ちょっと、そこのあなた」
 歓声をあげた春奈にそう返した夏未は、レジで暇そうにしていた店員を呼びつけ、花火の棚を指差した。
「ここにある花火、全部くださる?」
「ええっ!? 全部買っちゃうの!?」
「何か問題でもあって?」
 驚いて思わず声を上げた一之瀬を、夏未がツンと一瞥する。
「部員は多いのだから、数が足りなくなったら困るでしょう?」
「それは、そうですけど……」
 同じく驚いている春奈に、夏未はああ、と勝手に納得した様子を見せる。
「これは部費ではなく、私のポケットマネーから出させてもらいますからご心配なく。……場寅、来てちょうだい! 花火を買うのよ」
 店の外で待っていた執事を呼ぶ夏未の声がとても嬉しそうで、思わず鬼道と顔を見合わせた秋が苦笑しながらつぶやいた。
「夏未さん……もしかして花火、一番楽しみにしてるんじゃない?」
「……ああ、そう見えるな」
「そこ! なにを話しているの? ほら鬼道くん、荷物持ちなのでしょう? この花火、持ってちょうだい。一之瀬くんも!」

 かくして鬼道と一之瀬が持ち帰ってきた大量の花火を前に、雷門イレブンは日が暮れて暗くなるのを待ち焦がれているのだった。


「なあ染岡、ドラゴンがあるぜ、ドラゴン!」
「ドラゴンだぁ?」
 四角い小さな花火を示した半田に呼ばれ、染岡と、一緒に話していた豪炎寺が花火を囲む輪に加わる。
「花火のドラゴンより俺たちのドラゴントルネードのがよっぽどすげぇだろ。なあ、豪炎寺!」
「ああ、そうだな。でも花火とシュートを比べても仕方がないだろう」
「そうだけどよ、気分だ、気分! お前なら判んだろ、豪炎寺!」
 そんな染岡たちと入れ替わるように松野が輪を抜け、壁際でぽつんと体育座りをしている影野を構いに行く。
 少林寺も、宍戸が壁際に積み上げてある座布団の山に乗り上げて遊んでいるのを見て、そちらに混ざりに向かう。
 窓際にいた壁山と栗松も、宍戸や少林寺と一緒に座布団で遊び始めた。
 そんな一年生たちに、土門が「遊ぶのはいいけど、崩したらちゃんと積んどけよ!」と声をかけた。

「あ、これ、線香花火だ。アメリカにはなかったんだよな。……ん? これは何だろ?」
「ああ、それはへび玉ですよ」
 黒い小さな固まりに興味を示した一之瀬に、さっきまで一人で携帯を覗いていた目金が解説に寄ってくる。
「もしかして見たことないんですか? きっと驚きますよ」
「あー、それってアレだろ? 別名……」
「ただいまー」
 半田が何か言いかけた時、部屋の入り口に円堂と風丸が姿を現した。気づいた一之瀬がひらりと手を振る。
「あ、円堂。風丸。おかえりー」
「どうだった? 監督、来てくれるって?」
「監督じゃなくて、古株さんが来てくれるって。あと、夏未んとこの場寅さんも」
 問いかけた土門に円堂が答え、風丸が先を続ける。
「監督と菅田先生は宿のおじさんと積もる話があるって。なんでも宿のおじさん、伝説のイナズマイレブンの関係者らしいぜ」
「なるほど、どおりでこんな大人数の合宿を、快く受け入れてくれた訳です。……円堂くん、その積もる話が気になるんじゃないですか?」
 目と眼鏡をきらりと光らせた目金に円堂がうーんと唸る。
「気にはなるけど、大人の話だって言われちゃったんだよな。それに、花火もやりたいし」
「円堂、鬼道はどうしたんだ?」
 話の流れに逆らって、横から豪炎寺が問いかけた。花火をやるのなら誰か大人が一緒にいた方がいいと言い出して、円堂と風丸を連れて監督に許可を取り付けに行ったのは、そもそも鬼道だったはずだ。
「鬼道なら音無になんか頼まれて、手伝いに行ったぜ」
「そうか」
 円堂に代わって答えた風丸に、豪炎寺が頷く。練習を抜けて買い出しにつき合うほど、妹には弱い鬼道だ。頼みごとをされて断る訳がないだろう。
「なあ円堂、アキたちは何してた?」
「夕飯の片付けしてくれてるよ。終わる頃には花火にちょうどいい時間になるんじゃないかって言ってた」
 円堂の答えに、訪ねた一之瀬と土門が顔を見合わせる。
「そっか。だったら俺、ちょっとアキたち手伝ってくるよ」
「あ! 土門、俺も行くよ! それじゃみんな、後でね!」
 額の横で人差し指と中指を揃え、ぱちんと片目をつぶった一之瀬が、土門と一緒に部屋を飛び出して行った。
「ああ、後でな!」
 見送った円堂は、花火を囲む半田たちの輪に混ざり、風丸は豪炎寺と今日の特訓のことを話し始める。

 ゆったりと時間が流れ、窓の外はようやく茜色に染まり始めた。
「なあ円堂、そろそろ浜辺に移動してもいいんじゃないか?」
「ん? ああ、そうだな」
 半田の言葉に頷いて、円堂はぐるりと部屋を見渡した。
「みんな、そろそろ花火、始めようぜ!」
「あ、あのう……キャプテン……宍戸が」
 気合いを入れた円堂に、壁山が遠慮がちに声をかけてきた。見れば、散らかったままの座布団の間で、一年生たちが困った顔で宍戸を取り囲んでいる。
「どうした……って、もしかして宍戸、寝ちゃってるのか?」
 座布団に埋もれるようにしてにうつ伏せた宍戸は、すやすやと寝息をたてているように見える。
「宍戸、宍戸! 起きるッス 花火、はじまるッスよ?」
「ん……。うー……ん……」
 その鳥の巣のような頭を揺すられても、宍戸が目を覚ます気配は見えない。
「……起きないでやんス。どうするでやんスか、キャプテン」
 困った1年生たちが円堂を見る。そこへ松野の声が割って入った。
「ねえ円堂、影野も寝ちゃってるんだけど。こっちも全然起きなそうだよ」
「ええっ、影野も?」
 壁に背中を預けて膝を抱えた姿勢のままで、影野が器用に眠っている。
「これ、寝てるんだよな?」
「たぶん。寝てなかったら怖ぇから、そういうことにしとこうぜ」
 半田と染岡がひそひそとささやき交わす。
「どうするんだ、円堂」
「うーん……」
 豪炎寺の言葉に腕を組んだ円堂が考え込む。
「起こすのも置いていくのも可愛そうな気がするけど……」
 どうしたものか、意見を求めるように2年生たちの顔を見渡した円堂だったが、その視線が途中でぴたりと止まった。
「……あれっ? 風丸?」
 ついさっきまで誰かと話す声が聞こえていたはずなのに、畳んで積まれた布団に寄りかかった風丸が、その布団に埋もれるようにして寝息をたてていた。
「うっわ、嘘だろー?」
 驚きの声を上げて、半田が風丸の寝顔をのぞき込む。
「珍しいな。風丸っていつも隙がないのに」
「はっ、1年の宍戸やモヤシな影野はまだ判るけどよぉ、風丸が寝ちまうなんて、特訓が足りてねぇ証拠だぜ」
 吐き捨てた染岡に「それは逆ですよ」と目金が口を挟んだ。
「今日の風丸くんは、自分の特訓に加えてみんなの面倒もみていましたからね。人一倍走り回って疲れたんでしょう」
「目金、良く見てるね」
「当然です。ボクはいつでも、チームの様子に気を配っていますからね!」
 巧妙にサボって人一倍走らずにすませたメガネが、松野の言葉に胸を張る。
「キャプテン、キャプテン、起こすんなら、くすぐっちゃったらどうでしょう?」
 いたずらっぽく目を輝かせ、わきゃわきゃと手を蠢かせた少林寺に、円堂がそっと首を振る。 
「よせよ。みんな疲れてるんだから、駄目だ。な?」
「はい……」
 しゅん、としょげた少林寺の後ろで、寝顔を撮ろうとこっそりカメラを起動していた松野が、そっと携帯を畳んだ。
「円堂、まだ行かないのか?」
 そこへ、鬼道が顔を覗かせた。
「あ、鬼道。手伝いはもういいのか?」
「ああ。木野たちの片づけも終わったから、お前たちの様子を見に来たんだが」
 言って室内を見渡した鬼道も、眠り込む風丸に目を留めて驚いた表情を浮かべた。
「風丸? 寝ているのか?」
「うん…疲れたみたいでさ。それに、影野と宍戸もなんだ」
 困った声の円堂に、鬼道はすぐに状況を察したようだった。
 もう一度部屋を見渡した鬼道は、どこに通じているのかよくわからない電話の横にメモ帳を見つけ、そちらへと歩み寄った。
「風丸もいるんだ、一言残して行けば大丈夫だろう」
 言いながら、鬼道は中学生とは思えないほど整った文字をメモ帳に書き付ける。
『先に行っている。起きたら来い』
「なるほど! さっすが鬼道だな!」
 のぞき込んでいた円堂がぽん、と手を打つ。
「それじゃあみんな、行こうぜ!」
 おう!と応じた部員たちがぞろぞろと部屋を出て行くのをキャプテンらしく見守っていた円堂は、ふと思いついて風丸が枕にしている布団の山から、3枚の上掛けを引っぱり出した。
 1枚を宍戸に、1枚を影野に、そして最後の1枚を風丸にかけてやってから、円堂は鬼道が書いてくれたメモをもう一度見返す。
 そしてペンを取り上げると「待ってるから、早く起きろよ!」と書き加えた。



 * * * * *



オールキャラすぎて何が書きたいのかブレブレになっちゃってますが、
要するにうっかり油断して寝ちゃう風丸さんが書きたかったんですよっていう。

薄まりすぎだろ……!(笑)

海に入るといつもよりずっと疲れるよなーと思いまして。
ラーメン屋でぐったりしてた風丸さんなら、寝てもおかしくないじゃない?

最近のアニメで沖縄行ってて、もし無茶な特訓したら内容かぶってどうしよう?
とか思ってたけど、やらなかったですね、特訓。海だと本当に危ないからかな?
でも、アニメの修練場も相当ヤバい特訓してましたよね…。アニメじゃなかったらヤバいて!


かっ飛ばして書いたので、ちょっとだけ補足。
・途中で半田さんが言いかけた花火の別名はただの下ネタです。
 知ってる人は多そうですが…。中学生だし、そういうのは本当は好きそうだよねー。
・合宿はアニメに準じて、監督と菅田先生と古株さんと場寅さんが付いてきてます。
・鬼道さんは春奈ちゃんに頼まれて、お風呂の薪運びをしてました。土一も同じ運命です。
・この後わりとすぐに目が覚めた風丸さんは、ちゃんと影野と宍戸を起こして花火に加わります。
 しばらく寝顔を見ちゃったとか油断大敵だとかって、皆からかわれるといいんだ!
 

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